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Look Alike

尾勇のweb再録集です。原作完結後に書いたものを主に収録しています。書き下ろし2編つき。

装丁

カバー画像

B6判166P
カバー:おとぎのくに ふしぎのドレス110kg+グリッターPP
表紙:ミニッツGAスノーホワイト170kg
遊び紙:NTラシャ漆黒100k(前後)
本文:オペラホワイトマックス73kg
印刷所:プリントオン/ツクヨミ

フォント:しっぽり明朝 9.45pt
字数:40字
行数:17行
天 :74.7pt
地 :63.2pt
のど:49.59pt
小口:39.7pt


組版は前回に引き続き威沙です。

カバーのデザインは早々に決まったものの紙と仕様で大変悩みました。作成当初はこいするせかい+マットPPの予定でしたが、シルバーとゴールドを1枚に同居させられるふしぎのドレスにしてよかったと思っています。グリッターPPはちょっと反りますね。

カバー下(表紙)はミニッツGA。ちょっと布目っぽい不思議な手触りのエンボス紙です。擦れによってトナーの落ちやすい紙なので印刷部分を極力減らし、尾形の外套をイメージしつつ地が活きるような形にしました。カバーとの手触りの違いを楽しんでもらえればと思います。

題名のLook Alikeは「そっくりさん」の意味です。ずっと”私たちは同じで違う/違うけど同じ”というテーマで書き続けてきたので、鏡像関係を匂わせるタイトルにしています。

収録作品の解説

当項は筆者一個人の解釈を示すものであり、これを読み手に強制するものでも、“答え合わせ”ということでもありません。 読者の皆様におかれましてはどうかご自身の思ったこと・感じたことを第一になさってください。

クリックで展開

◆正午の空に星は見えない
原作完結後からずっと書きたいと思っていた話で、1年越しにようやく叶ったという経緯があります。作中に登場する日付は310話が本誌に載った日です。 サン=テグジュペリやガンダムシリーズ(にしばしば描かれる宇宙的孤独)などから多大なインスピレーションを受けています。直近の朝ドラがパイロットになりたい主人公の『舞い上がれ!』だったので、こんなことならちゃんと観ておけばよかった…というのはちょっと思いました。

◆不滅のエフェメラ
前作BOOST特典。2023.2.14に発表された尾形のペーパーナイフの衝撃のまま書き綴ったものです。奇遇にも前作を入稿した直後のことだったので、「え? こんなすごいものが公式から出るならこの本いらなくね?」と思ったりもしましたが、それはそれ、これはこれと思うことにしました。たまたま観たN○Kの教育番組に福寿草が出ていて、蜜がない代わりに熱を集めて虫を呼び込む(そうして花粉を運んでもらう)というのはそこで学んだことでした。話の筋は共存よりも一歩先の「共生」をイメージしています。

◆誰ヨリモ汝ヲ愛ス
食べるものは食べられる、というグノーシス派の思想を拝借しています。話の構成は英国流の皮肉のプロフェッショナルであるサキを参考にしましたが、この話の後味は甘いと筆者は信じています。“愛す”なだけに。激寒ジョークです。アイスなだけに。

◆さまよえる黒猫
モチーフの多くを芥川龍之介『さまよえる猶太人』に依っています。すなわち、罪(の十字架)は自らそれを背負う者のもの、という話です。 余談ですが、中世に魔女狩りが大流行した折、多くの黒猫が悪魔の使いとして女性たちと共に殺され、イタリアにはその霊をなぐさめるためのお祭りがあるそうです。一方江戸時代までの日本では黒猫はむしろ幸運や病魔退散の象徴であり、飼えば結核(当時は不治の病でした)が治るとまで言われたこともあったそうです。肺病に効くというのは原作本編にも描写があります(→杉元の過去編)。

◆六月
GK(ごめんね幸次郎)小説。 クチナシと朽ちなしと口無し、種と胤がそれぞれ掛かっています。

◆狼青年
尾形が赤ずきんと狼と猟師の三役というトンデモ赤ずきんパロ。 はざまの人をテーマにしています。

◆メイド・イン・ヘヴン
タイトルは冥土とmadeとmaidが掛かっています。 この尾形は本業狙撃手なんですが、両思いなのを知るがゆえに本当のことを打ち明けられず、その後ろめたさから”恋人らしいこと”をするのを躊躇っています。むしろ全部バレて拒絶されたり罰を受けたりする方が自分には相応しいとまで考えてるんじゃないでしょうか。なので、「暴かれたい話」というのは密かに愛撫を待ち焦がれている勇作さんの気持ちだけでもないんですけれども、「たとえ虚飾を纏っていても(=ありのままをさらけ出さなくても)あなたが好き」というのがふたりの本意なわけです。……というわけで、最後は着の身着のままでやってるというオチでした。

◆悪魔の証明
明星の悪魔とはルシフェル(神の意に従わず地獄に落ちた最高位の天使)のことです。この話の尾形は元人間で元天使で悪魔(堕天使)、という非常にややこしい設定をしていますが、筆者としては(ブレイクに倣って)そこまで厳格な区別をしていません。

◆回転木馬
自分が走馬灯の好きな子どもだったことを思い出しながら書きました。

◆光捧げしものたち
あなたの目で世界を見てみたい、という話です。この尾形の勇作さんに対する感情は(自覚がないだけで)ほとんど一目惚れなのですが、本人をそう問い糾したところで絶対ウンとは言わないと思います。

◆AtoZ:I am the End
自分で読みたいものを書きました。

◆忘れられた法悦
神父は英語でfather、つまり神父=勇作の吸血鬼としての親であるというのを早々にネタバレしてるんですが、読解コストの高すぎるトリックだったかもしれません。 この兄は記憶喪失の勇作が自分に対して他人行儀に振る舞うことに深刻に傷つくようないじらしさを持っていて、かつて禁を破って勇作を愛した上、その勇作をうまく転化させられず二度と目覚めないかもしれない状態にしてしまったこと、ずっと見守ってたのにちょっと目を離した隙に脱走されてしまったことについて「やっぱり俺では駄目か」と思ってるので向こうが全部思い出すまで何も言い出せずにいます(かわいそう)。 ちなみに同族の血はおいしくないという裏設定があるんですが、このふたりは互いに互いの味しか知らないし知る必要もないようです。お後がよろしいようで。

◆この世の地獄
「戦争はカネになる」という話です。


◆長靴を履かない猫
タイトルは『長靴をはいた猫』と将校の履く長靴(杉元が履いてるアレは上官を半殺しにして剥ぎ取ったものだという設定が確かFBにありましたね)を掛けています。中尉と尾形がどういう風にして出会ったのか、というのを想像して書いた話です。宇佐美とどっちが最古参なんでしょうね。

◆君懸草
この話を書くために調べたこと:

  • スズランは全身強毒で、活けた後の水を飲んだことによる死亡事故もある
  • 英語圏での通称は谷間の百合、聖母の涙、天国への梯子
  • 花言葉は「幸福の再来(return of happiness)」「純潔(purity)」
  • 白百合=純潔 というイメージは基督教文化由来(よって近代化以前の日本にはほぼない)
  • 道内のスズラン自生地は戦後のスズラン狩りの流行により壊滅(現在では自治体の管理下で一部が復興)
  • アイヌ文化におけるスズランは基本的に生活の役に立たないものであり、珍重されていなかった
  • あまり有用でない植物に対する”犬の何々”という命名規則は和人にもある(イヌサフラン、イヌナスビなど)

◆心中立て
『オリフラムと山猫』の前日譚扱いです。韜晦と愛してしまうことへの戸惑いが8:2くらいになるように書きました。指切りが吉原文化発祥であること、“永遠の愛”は確約ができないこと、旧幕時代からの諸々が明治末期はおろか現代にまで生き残っていること、をテーマにしています。むかし観た『陽のあたる場所』からの影響が大きいかもしれません。終盤あたりは母を傷つけた/己をつくった父と同じ性であることに対する尾形の複雑な感情を表現したつもりでした。

◆オリフラムと山猫
オリフラムはフランス語で軍旗のこと。膚を介して互いに互いの気持ちを理解しているからこそうまくいかない(尾形は尾形の役を裏切れない)、という話でした。

◆氷原果つるところ (書き下ろし)
“責任の話”です。FB質問箱「病院からの逃亡後、洗濯物を盗もうとして捕まった尾形」ネタ。副題のWildcat’s Cradleはあやとりの技のひとつであるCat’s Cradleから。このおじいさんは人情家というよりも「目の前にいるズタボロの男を見捨てることができない人」、「倹しい暮らしの中で見ず知らずの他人にリソースを割く覚悟を持つ人」として書きました。俺に罪悪感なんかないというテイの尾形にはいろんな意味で居心地の悪い頑固さだと思います。

◆偶像なきあと (書き下ろし)
“役を降りた後の話”です。あまりにもタイトル通りの話なので特に書くことないんですが、尾形が後ろめたさの中からじわじわ思い出したのに対し、この勇作さんはずっと兄のことを(そして兄が自分を撃ったことを)覚えていました。