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ゆびきり

 突きつけられる小指と強情。その瑪瑙の双眸は未だ涙に濡れていて、されど毅然と前を向く。この年少の幼なじみはいかにも末子らしくしたたかで、自分に特別甘い兄貴分のかなしき性をとてもよく心得ているのだった。こうすればこいつは絶対に断らない、と。それは事実であるのが、またかなしい。
 怪我の養生に費やした半節の間にみたびも見舞いに来てくれたこと、そして再会に際して泣くほどに心配してくれていたことがなにより嬉しくて、シルヴァンはあたかも白旗をあげるような心持ちで小指を番える。
 ああ、そうとも、どれだけ負けてやってもいい、このかわいい弟分になら。でも、今回ばかりは我儘をひとつ許してほしい。
「なあ、もうちょっとだけ、騎士っぽい言い方にしようぜ。"死ぬ時は一緒"、こっちの方が絶対、格好がいい」
 薄く笑ってそう告げると、フェリクスは黙ってごくんと頷いた。フェリクスにとってのシルヴァンがそうであるように、シルヴァンにとっても、この純粋で癇の強い少年は替え難く大切な存在だった。自分も、置いていかれたくはない。もとより置いていくつもりもないが。
 小指と小指がいよいよ堅く絡み合う。
「ファーガスのきしは、約束をたがえない」
 父か兄か、はたまた殿下かイングリットか、誰かの受け売りを諳んじる幼なじみの目は、然し真剣そのものだった。フェリクスは今日の誓いを覚えているだろうか。いつか自分たちが大人になって、その言葉の重みを真に知る日まで。
「うん、ファーガスの騎士は、約束を違えない。……このくらいの怪我、なんともないさ。今に絶対よくなるし、死んだりなんて絶対しない。だからさあ、そろそろ機嫌直してくれよ、な?」
 世界はお前にやさしいよ、何も心配いらないさ。シルヴァンは誰彼にともなく心でそう唱えながら、フェリクスの頬を伝ういたわりの名残をそっと拭った。

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