俺とあなたは同じで違う
勇作は手を繋ぐのが好きで、寝ても覚めてもお構いなしだ。いい歳していい歳した男の手の何が良いのかと思うが、俺としてもいくつの誰の手なら良いだの悪いだのということもなく、やめさせる理由を探すのも面倒なので放置している。
勇作が俺の昔を知らないのと同じで、俺も勇作の昔を知らない。別段知りたいとも思わない。が、こいつは図体以外はそのまま大人になったのだと、それやこれやから容易に想像がつく。手前の兄とやらが性根の腐ったどうしようもない奴でないとも限らんのに、出会った日から勇作は兄の何も疑いはしない。ずっと兄弟が欲しかった、ひとりっ子育ちだから、などと言いながら、まるで生まれた時から弟だったかのように俺に接する。それは勇作が俺とは違う、祝福されて生まれた子どもだからなせることなのか。俺には何もわからない。祝福されてもいなければ、生まれついての兄でもない俺には。
思いながら無駄に体温の高い掌を握ると、向こうも決まって同じように握り返してくる。俺はわざわざ瞼を開けない。隣に寝ている異母弟がこういう時にどんな顔をしているかなど、見なくたってわかっている。もう散々見てきた。あの男には毛ほども似ない、綺麗な面。そこに花も恥じらう笑みを浮かべて、俺とは何もかもが違う。
「寒くありませんか? 兄様」
この状況で寒いわけあるか、と思うが俺は黙っている。黙ってただ手を握り、ただ握り返される。熱を奪うだけの厄介者とこうして何の得があるのか、俺には到底理解できたものではない。勇作の方も俺を理解できないだろう。都合のいいことだ。俺が既に勇作なしには生きられないことも、何も知られずに済むのだから。