破瓜の血
今更何を言ったところで強がりにもならないことは、己が一番よく知っている。根本から腐敗していたとはいえ、ファーガスは紛れもなく俺の故郷だった。俺とて父も母もある人の子だ、そこに愛着と呼ぶべき感情がないというわけではない。無論、残してきた友の類いにも。
それでも俺は、どうあってもあの教師を超えなければならないと思っていた。俺の求める答えはその先にしかありえないという当初の直感は、負け続ける日々の中でいつしか確信に変わっていた。ゆえに俺は、俺ひとりの都合で黒鷲に移った。教団への叛逆に身を投じたのも同じ理由からでしかない。
そうだ、たとえ己がすべてを投げ打っても、俺はその答えとやらが欲しいのだ。ひりつくほどにも渇いていた。ずっとそれだけが欲しかった。俺がいつかどこかで失って久しい何か、その穴を埋めるものがもしあるとすれば、きっとそれだけだろうと今も思っている。
教条、騎士道、猪王子の人間面。ファーガスという国は端から端まで欺瞞と綺麗事に満ちていて、だから誰もディミトリの真に触れられない。王のみならず教団に対しても至誠という盲を貫く父などは、まさにその首魁のようなものだ。
耐え難かった。兄が死んだあの日から。
俺はあの男とは違う。何も諦められずにいるイングリットや、いつも何かを諦めているシルヴァンとも違う。
真綿のように纏わりつくあらゆる嘘を斬り払い、混じり気のない、氷河よりも冷徹な真実をこの手の内に掴み取るために、俺という剣は余人の血にまみれるのだ。ああ、もういくら汚れようと厭うまい。俺が俺自身を遠く彼方に振り切って、研ぎ澄まされた切っ先がまだ見ぬ高みに届く時、いつかは来るその時に、俺のすべては報われよう。その日まで、俺はただ己が道を征くだけだ。俺自身がそれを選んだのだ。
空に月は出ていない。俺を載せた運命は、夜の闇を破滅に向かって走り出す。身を切るような向い風に火薬の匂いを嗅ぎながら、今は、せめて今だけは、この選択に伴う痛みを噛み締めていようと思っていた。