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駆け引き

「近頃のお前の剣は、以前とは何かが違う」
「そうかな」
「そうだ」
 有無を言わさぬ一撃を、ベレスは鍔元深くで受け止めた。交わす刃越しに視線がぶつかり、目と目が互いに問いかける。
 さあ、どうする。
 腕力の差は歴然で、押し合いは必然的に長くは続かない。フェリクスのことだ。牽制らしく見せておいて、やはりこれは牽制でしかないのだろう。動くことを読まれている。ならば、と自ら均衡を崩しにゆくその刹那、彼女は小声で囁いた。
「きっと、恋を知ったから」
「何だと」
 その一瞬の動揺を、ベレスが見逃すはずもない。すかさず相手の柄頭を掴んで腕を捻ると、フェリクスはいとも容易く得物を取り落とした。それは今日までの仕合でもっともあっけなく、そして静かな幕切れだった。
「はい、一本」
「今、何と言った」
「私の勝ち」
「違う。そんなことは見ればわかる」フェリクスはかぶりを振って食い下がる。「そのひとつ前だ」
 あの負けず嫌いのフェリクスが、まさか勝敗を二の次にすることがあろうとは。事の大きさをベレスは笑って、先程奪ったばかりの剣を彼に差し出した。
「二度は言わないよ。君ほどの使い手に、まさか同じ手は二度通用しないだろうから」

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